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香りが生み出す“記憶に残る空間”

商業施設におけるアロマブランディングの効果

画像の説明

街が冬支度をはじめる11月。商業施設やホテル、イベントスペースなどでは、「香りによる空間演出」が注目を集めています。 香りは単なる装飾ではなく、来場者の感情や記憶に直接働きかけ、ブランドの印象を強化するマーケティング手法として世界的に広がっています。

香りが「感情」と「記憶」に働きかける科学的メカニズム
私たちが香りを感じるとき、嗅覚の情報は脳の中でも「感情」と「記憶」を司る大脳辺縁系に直接届きます。 このため、特定の香りを嗅ぐと過去の体験や感情がよみがえる―― これは「プルースト効果」と呼ばれる現象です。 商業施設やホテルでは、この効果を利用してブランドの世界観を香りで表現しています。 たとえば、上質なウッド調の香りは「安心感と高級感」を、シトラス系の香りは「清潔感と爽やかさ」を印象づけます。 香りは空間の「雰囲気」を超え、訪れる人の記憶と感情に残る体験をつくり出すのです。
香りがもたらす滞在時間・リピート率の向上
香りを導入した商業施設では、来場者の滞在時間やリピート率が向上するという研究結果があります。 米国の調査では、アロマを導入した店舗で平均滞在時間が15〜30分延びたと報告されています(Hirsch, 1995)。 また、香りのある空間では「快適さ」「安心感」「また訪れたい」というポジティブな感情が高まり、購買意欲にも良い影響を与えることが確認されています。 つまり、香りは“見えないデザイン”でありながら、空間価値を高めるマーケティングツールとして大きな役割を果たしているのです。
香りで広がるアロマブランディングの可能性
香りの印象は、空間デザイン・照明・音と融合することで、より豊かな体験を生み出します。 空間の目的や動線・来訪者層に合わせた香りのブレンドを調香することで、より五感で味わう空間づくりが可能となります。 また、季節やイベントに応じた香りの演出(クリスマス・ホリデーシーズンなど)も来訪者への印象をより豊かにしてくれます。 香りは人の記憶に残り、ブランド価値を高める“体験の要素”です。 空間そのものを香りでデザインする――それが、次世代のウェルビーイングな空間づくりにつながります。

Hirsch, A. R. (1995). Effects of ambient odors on slot-machine usage in a Las Vegas casino. Psychology & Marketing, 12(7), 585–594.

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